王様とマリ

王様とはじっこの村 ~王様とマリ④後編~

マリ達が村の入り口に着くと、村人達が歓迎してくれました。「ようこそ、はじっこの村へ!」そう、この村は国のはじっこ、だからはじっこの村です。
村人は、マリ達が着いたことをとても喜んでくれました。「王様、ようこそこんなはじっこまでお越し下さいましたね!」村で一番長生きの長老がいいました。「ちょうど、今日は一年に一度の村祭りなのです。どうか楽しんでいってくださいね!」マリ達は、丁度村祭りの時期に訪れたようで、大喜びです。「それは楽しみじゃ、村祭りには何かおいしいごちそうはでるのかね?」食いしん坊の王様は聞きました。
長老は答えます。「おお、そういえば、王様がぶつかった木から、それはそれはおいしい木の実がとれるのですよ!」おいしい木の実と聞いて、マリもにっこりです。「へぇ~おいしそうね!とても楽しみだわ!」
「そうだ、これからちょうど木の実を集めにいくのですよ、ご一緒されてはどうですか?」セバスチャンが答えます。「王様、ぜひご一緒させてもらいましょう。」「うむ、もちろんじゃ!」こうして、王様は長老達と木の実を集めにいきました。
確かに、マリ達がついらくした木には、よ~く見るとおいしそうな木の実がたくさんしげっています。「何ともおいしそうじゃな~」王様が木の実に手を伸ばすと・・・、ビュッっと一本の弓矢が木の実を打ち抜きました。
「きゃぁー、いったい誰?」マリがあわてて弓矢が飛ばされた方向をみると、なんと向かいの村の人達がカンカンに怒っています。「はじっこの村、その木は俺達向かいの村のものだぞ!木の実に手を出すな!」王様達は物かげに隠れましたが、長老は真っ直ぐに立って向かいの村の人にまけじと怒鳴り返しています。「何をいうか、いつもいつも邪魔をしおって!この木はワシらのものだぞ!今日は王様もいるのじゃぞ!」そうなのです、はじっこの村の人達は、となりの国の向かいの村の人達と、何かといっては争っていました。ここははじっこの村の土地だ、いや向かいの村だと、いがみあっていたのです。
本当は逃げ出したかったのですが、こういわれては王様も出て行くしかありません。「私がこの国の王様じゃ!この木はワシの国のものじゃ!木の実は誰にも渡さんぞ!」食いしん坊の王様としても、この木を他の国のものにしたくはないのです。セバスチャンも続けます。「王様に傷でもつけてみなさい!すぐに兵隊が飛んできますぞ!」兵隊ときいて、向かいの村の人たちもざわざわしはじめました。
でも、マリは思っていました。「どうして、私達は取り合うのかしら?この木は本当は誰のものでもないはずだし、みんなで分け合えればいいのに」と。
でも、王様達と向かいの村の人達の言い合いはとまりません。どちらも譲らず、このままでは本当に兵隊を呼ばなくてはいけないかもしません。マリは必死に王様に話しかけます。「ねぇ、なぜこの木は王様の国のものなの?」「そんなの決まっておる、わしの国の中にあるからだ!」王様は答えるのもばかばかしいというようにいいました。「じゃあ、王様の国は誰が決めたの?」「それは、王様のお爺さんですぞ!そのときから、ずっとここは王様の国なのですじゃ。」セバスチャンもさも当然だと答えました。
『その前は誰のもの?」今度は、誰も答えることができません。「どこの木が誰のものかなんて、人が決めたものでしかないじゃない!だから、この木はこのみんなのものよ。この世界から、私達は分けてもらっているんじゃないかしら?」マリは言いました。
この言葉に、いがみあいにうんざりしていた長老も大きくうなずきました。「確かにマリさんのいうとおり、この木は誰のものでもなかったのかもしれん。」王様も、セバスチャンも、向かいの村の人達も、本当は争いたくなかったので、この意見に賛成しました。
そして長老はいいました。「そこで、こういうのはどうじゃろうか?この木の実は、はじっこの村と、向かいの村でわけっこをして、それから向かいの村の人達には、祭りに交じってもらうというのは!?」向かいの村の人たちも、この提案に大賛成です。こうして、みんなでにぎやかに祭りが始まりました!
「王様、みんなで楽しめてよかったね!」マリは嬉しそうにいいました。「そうじゃの~、ところで、じゅうたんは破けてしまったんじゃが、どうやって帰ればいいかの~。」そう、マリのじゅうたんは木にひっかかって、破けてしまっていたのでした。
「そうだった、何とかしてよ、セバスチャ~ン!」
エピローグ
今、韓国の竹島、また中国との尖閣諸島、日本は領土問題で大きく揺れていますね。しかし、そもそも領土なんてものは人間が勝手に決めたものです。
私達が領土をきめるずーっと前から島はそこにあったというのに、いくら人が歴史を掘り返しても、正しい答えなんて見つかるわけがありません。結局、それは誰のものでもない。資源も土地も、私達は地球から借りているに過ぎません。私も、この問題をどう解決すればいいのかはわかりません。ただ、国という人のルールに縛られず、宇宙船地球号の一員として、平和の中で解決される事を祈るばかりです。

王様とはじっこの村 ~王様とマリ④前編~

今日も平和な王様のお城。マリは何か面白いがものがないかと、お城の一番高い塔から景色をみています。マリは魔女の国からやって来た見習い魔女。この世界のことを勉強中の、少しおてんばな女の子です。
マリはふと気になったことあり、執事のセバスチャンに尋ねました。「ねぇ、セバスチャン、王様の国はどこからどこまでなのかしら?あそこの高い山の向うは王様の国?」セバスチャンは、王様に仕えて50年、王様が小さい頃から王様の世話をしてきた、優秀な執事で、この国のことは何でも知っています。
セバスチャンはいいました。「ええ、その山の向うも王様の国ですよ。王様の国はとても広いのです。ああ見えても、王様は立派なのですぞ!」「へぇ~」マリはいまいち信じられないという顔。無理もありません。王様は大人になっても好き嫌いばかり、とても立派な人には思えなかったのです。
その時、後ろで声がしました。「マリ、セバスチャン、私を置いて何をしておるのじゃ!」王様は、一人ぼっちにされて寂しかったのでしょう。やっぱり子供みたいな王様です。「ああ、王様。この国ってとっても広いのね。国のはじっこまでいってみたいわ!。」マリは王様に言いました。ちょうど王様も退屈していた所です。平和だから、あまりやることがないのですね!「よし、では国のはじっこまで今日はでかけよう!」王様もマリの提案に大賛成です。
しかし、セバスチャンは少し困り顔です。「しかし、王様。この国はとても広いのですよ。馬にのっても、国のはじっこまでいくのに3日は掛かってしまうでしょう。」そう、国のはじっこは、山のずっと向うにあるのです。マリは、せっかくの楽しい計画がなくなっては大変だと、慌てて声をかけます。「大丈夫よ!これに乗っていきましょう。」そういうと、マリはじゅうたんに向かって合言葉を唱えます「アイウィッシュ、アイバード!」するとどうでしょう、ふわっとじゅうたんが浮き上がりました。「これに乗っていけば、すぐに着くわよ!」
王様もこれにはびっくりです。「なんと素晴らしい、セバスチャン、早速はじっこまで出発じゃ!」そういうと王様は元気にじゅうたんに飛び乗りました。「王様、日帰りですぞ!」セバスチャンも、王様を注意していても、魔法のじゅうたんの旅は楽しみなようです。さぁ、じゅうたんにのった三人は、国境に向けて出発です!じゅうたんはふわりと浮き上がると、窓から勢いよく飛び出しました。
じゅうたんは凄いスピードで空を駆け抜けます。お城がどんどん小さくなって、大きな山を二つ越え、河を渡ると、小さな村が見えてきました。「あそこが王様の国のはじっこですぞ!」セバスチャンが決して下をみずにいいました。「了解!」そういうとマリはじゅうたんを杖でつつきます。「着陸するから、しっかり捕まってるのよ!」その言葉と同時に、じゅうたんは傾いて、一目散に地面に向かっていきます。「ぎゃーーーー。」王様もセバスチャンも、地面にぶつかってしまうんじゃないかと大声をあげています。
「きゃ~!」マリ達が乗ったじゅうたんは、地面に一直線。哀れ木に引っ掛ってしまいました。「う~ん、王様、大丈夫!?」地面にはぶつからずにすみましたが、王様達は葉っぱだらけです。「う~む、もう二度とじゅうたんには乗らんぞ!」と王様はいいました。「まったくですなぁ・・。」セバスチャンもぶつぶつといっていますが、マリは元気一杯です。「大丈夫そうね。探検に行きましょうよ!」マリはいきようようと、村に向かいました。
「マリ様、私が案内しますのでお待ち下さい!」これ以上トラブルはごめんだと、セバスチャンは慌ててマリを追い掛け、一人になりたくない王様もマリを追いかけます。こうして、マリ達ははじっこの村にたどり着きました。

王様とビッグイシュー ~王様とマリ③後編~

「なんじゃ、マリよ!これから忙しくなりそうじゃ。話は簡単にな!」王様は早く食べ物を集めたくてうずうずしているようです。
マリは言いました。「王様、なぜ、遠くの貧しい国に食べ物をあげるの?この国にも食べられない人はたくさんいると思うわ!まずはその人たちに分けてあげるべきじゃないかしら?」そう、マリはやっぱり、さっきのおじさんたちに食べ物をわけてあげるべきだと思ったのです。
しかし王様はいいました。「マリよ、これはただあげるというだけじゃないのじゃ!何せ、貧しい国に食べ物をあげるということは、それだけワシの国の偉大さを示す事にもなるのじゃからのう!」そう、王様にとっては、自分の国を周りの国に認めてもらうことも大切なのでした。そのためには、自分の国の貧しい人ではなく、遠くの貧しい国の人に与えてあげることが大事なのです。セバスチャンもいいました。「ここに居るものたちは、真面目に働いている人ばかりじゃないですぞ!自ら貧しくなった人たちもいるのです。働くより、自由を選んだ人たちが居るのですよ」セバスチャンはそういったが、マリにはとてもそうは思えません。もう一度、マリが王様を説得しようとした時、貧しい小屋の人たちがたくさんでてきました。
皆身につけているものはボロばかり、つぎはぎだらけ。おじさんばかりではなく、おばさんも。小さな子供もまじっていました。
さっきのおじさんが言いました。「王様、私達だって困っているのですよ。私、ビッグイシューを覚えてないですか?私はすっかり仕事がなくなったのですよ。あなたに教えてから、私はどうにもできなかったのです」そう、マリがあったおじさんには、王様は見覚えがありました。かって、王様の家庭教師をしていたビッグイシューではありませんか?
「先生、このような所お会いするとは・・。でも一体どうして、あなたみたいに賢い人にも仕事がないのでしょうか?私に教えてくれませんか?」王様は、かつての先生の酷い姿にびっくりしてしまったようです。ビッグイシューは答えます。「王様の家庭教師をしていたことで、みんなから避けられるのですよ。私は、先生しかできないのに。みんな恐れているのです。私を先生にすれば、王様に何かを吹き込まれはしないかと、おそれているのです。そうして、まったく仕事がなくなってしまったのですよ。」ビッグイシューはすっかり肩を落とした。
「そして、この小屋に住んでいる人達はみんな、働きたいのですが色々と難しい事情があるのです。体が悪かったり、心が暗かったり、小さな子供がいるものもいるのです。でも、王様が貧しい国にパンをあげるというのなら、それはとてもいいことですよ。」ビッグイシューはそういいきりました。
王様はいいました。「ああ先生、私がとても間違っていました。遠くの貧しい国にことより、私はまだまだやることがあったのです。私は自分の国を豊かだと思っていたけど、そんなことはありませんでした。私の国を偉大に見せようとするよりも、先生がパンを手にする事の方が大事なのです。」マリは思いました。私達は、自分のことしか見えていなかったのね。こんなに貧しい人がいることに、すっかり目をつぶっていたんだわ!「王様、それがいいわ!私は毎日退屈だし、私が食料を届けるわ。私のほうきなら、簡単に荷物を届けられるもの。」セバスチャンもこの提案に賛成しました。「貧しい国のことは、他の豊かな国に任せましょう。私達にはまだまだやらなくてはいけないことがあったようですな。」ビッグイシューはとても感激していいました。「王様、あなたに会えてよかったです。あなたは昔から心が優しい子でした。私も、この国がもっとよくなるように、協力させてください。」
こうして、王様はビッグイシューを再びお城で雇い、また小屋の人たちには毎日パンを届けさせるようにしました。もちろん、これで全ての人が救われたわけではありませんが。しかし、まず近くに居る人に手を差し伸べれば、その輪が広がっていくでしょう。世界の全ての人が手をつないだら、私達はもっとたくさんの笑顔に出会えるでしょう。
今、日本では、多額の援助が政府から行われていますね。確かに、外国を助けようとすることも大切ですが、日本にも明日食べるものがない人、住む場所がない人がいることも忘れてはいけません。今、生活保護なども大きな問題になっているなかで、果たして海外の援助をしていいものなのか。確かにそれも大事なことかもしれませんが、日本の人達からみたら、見捨てられたというような気持ちを味わうかもしれません。 
マザーテレサはいってしますね。『大切なことは、遠くにある人や、大きなことではなく、目の前にある人に対して、愛を持って接することです』偉い役人達には、駅のホームにたたずむホームレスは、人間でないように写っているのでしょうか?私には、どうも日本の資金援助というものに、政治的な意図を感じざる終えません。役人達は、自分達が立派に見られたいがために、日本の貧しい人たちを見捨てているのではないでしょうか?日本にも助けなくてはいけない人がいるということを、忘れずにいて欲しいものです。

王様とビッグイシュー ~王様とマリ③前編~

王様の住んでいる世界には、王様の住んでいる国以外にも、色々な国がある。お金持ちの国もあれば、貧乏な国もある。
今日は、色々な国の王様が集まって、我らが王様のお城で話し合いをしています。
貧しい国の王様はいいました。「私の国には、たくさんの人たちが明日食べるご飯もなく暮らしているのです。私の国の人たちを助けてくれませんか?」可愛そうに、貧しい国の人々は、王様が何不自由なく暮らしている中、今もお腹をすかせています。豊かな国の王様はいいました。「私達は、助けあわなくてはいけない!貧しい国にみんなで食べ物をあげようじゃないか!」集まった王様達はみな大賛成しました。もちろん、王様も大賛成です。「それではさっそく、皆自分の国に帰って食べ物を集めよう!」
こうして、それぞれの国の王様は自分の国に帰っていきました。
王様は、さっそく執事のセバスチャンに訪ねます。「貧しい国に、一杯食べ物をあげたいのじゃ!セバスチャン、食べ物を集めてくれ!」セバスチャンは王様の考えにとても感心しました!「王様、とても立派になられましたね。私も嬉しゅうございます。では、早速、食べ物を作っている村まで参りましょう!」王様とセバスチャンが話していると、マリがひょっこりと現われました。
「王様、これから出かけるのね!私とても退屈してたのよ。ほうきにのせてあげるから、一緒に連れてって!」マリはとにかく楽しい事が大好き、王様がどこに出かけるのかと、興味津々です。しかし、王様はなかなか首を縦にふりません。「駄目じゃよ、これは王様同士の大事な仕事なんじゃから!」すかさず、セバスチャンが助け舟を出します。「王様、食べ物を集めるのに人では多いほど良いですよ!ぜひマリも連れて行きましょう。」こうして、マリと王様、セバスチャンの一行は食べ物がある村まで出かけていきました。
でも、王様とセバスチャンは、マリのほうきにのることは遠慮したみたいです。マリのほうきの運転は、ちょっとあらいですからね。こうして、王様とセバスチャンは馬に乗り、マリはほうきで出発です。
地面をけって、マリは空に舞い上がります。二つの山を越え、1つの湖を越えると、河のすぐ近くに村が見えてきましたよ!といっても、マリはほうきなので大分早く村に着いたようですね。「王様ったら、遅いのね!暇だから少し周りをみてみましょう。」
マリは、村の近くを流れている河を歩いていました。すると、なんともみすぼらしい、小さな小屋が集まっている場所にでました。
王様のお城よりとても小さく、どの家も壁はボロボロの板、扉は今にも外れそうで、窓には穴が開いていたり、今にも崩れてしまいそうな小屋ばかり。「ここは物置なのかしら?・・」マリが小屋を覗くと、中にはちゃんと人が住んでいました。ただ、何日もお風呂にはいっていないのか、顔はまっくろ。ほころびばかりの服を身につけたおじさんが、何もない部屋の中にぽつんとたたずんでいたのです。おじさんはマリをみるといいました。「あなたみたいに若い女の子が何しにきたんだい?見ての通り、ここには何もないんだよ。」マリは突然話しかけられて、びっくりしてしまいました。「私、王様と食べ物を探しにきたの。でも、ここには確かになさそうね。けどおじさんはどうして暮らしているの?」おじさんは質問には答えずいいました。「王様が食べ物を探しに来たって!私達だって探してるのに、王様にも食べ物がないのかい?」「違うわ、王様は貧しい国に食べ物をわけてあげるのよ。」マリは答えました。
おじさんは、いいました。「そりゃいいことだとも。もちろん、あの人ならそうするさ!私達も食べ物はないけど、着る物はあるからね。うんと貧しい国に食べ物をあげるといい。」そういうと、おじさんは悲しそうな顔をして、いまにも壊れそうな扉を締めてしまいました。
マリはなんだか難しい気持ちです。確かに、貧しい国があるのも確かだけと、このおじさんたちも食べ物がないと思うと、自分のしようとしていることが正しいのか、すっかりわからなくなってしまったのです。そうこうしているうちに、王様の馬車がやってきました。「マリ、待たせたね!さぁ、食べ物をさがしにいこうぞ!」マリは王様の後を着いていきましたが、やはり王様に話をしてみることにしたのです。「ねぇ、聞いて王様。私考えた事があるの」

王様とプロメテウス ~王様とマリ② 後編~

紅茶の水博士は、”プロメテウス”のボタンをカタカタと叩き始めます。するとどうでしょう、そこかしこがガチャガチャと動き始め、パイプからは水蒸気が立ち込めます。
鉄塔の中に轟々と音が響き、もくもくと水蒸気が沸いてきます。「わー、凄いわ!ね?王様?」王様は内心恐くなったものの、マリに悟られてはまずいと、平気な顔でうなずきます。
そこえ、一人の男がやってきました。「やめるんだ、紅茶の水博士!この実験は中止しろー!!」手に斧を持った男が、実験の音に負けない声で叫びます。「こんなに素晴らしい実験をとめるあなたは、いったい誰なんですか?」セバスちゃんが聞くと、博士が代わりに答えます。
「その男はきこりのキッコリーです。何せこの実験が成功したら、たき火の木が売れなくなるからと、邪魔をしにくるんですよ。」ああ、消えない火ができたら、きっと皆がたき火をしなくなり、きこりは仕事がなくなってしまうでしょう。
キッコリーも負けじと返します。「それだけではありません。王様、消えない火は、消せない火ですよ!燃え広がったらどうするんです!王様の大切なこの国が燃えつくされてしまいますよ!」
しかし、王様は消えない火の素晴らしさに、そんなことには気が回りません。「キッコリーよ、この素晴らしい実験を邪魔するでない!」王様に止められては、キッコリーもどうしようもありません。そうしている間にも、”プロメテウス”がちゃがちゃといろいろな歯車を回し、消えない火の実験は進んでいます。普段はうるさいマリーも、静かに実験を見守ります。
「あともう少しで、消えない火が完成しますよ!」紅茶の水博士が、重そうなレバーをがちゃりと降ろしました。
プォーーーン!!
”プロメテウス”から大きな音が響き渡ります。「できました!実験は成功です。消えない火が完成しましたよ!」
「なんと素晴らしい!!さっそく火をみせてくれ!」王様は待ちきれないようすです。
博士が、”プロメテウス”の大きな釜を開けると、鉄で出来た薪に、確かに消えない火がついているではないですか!
「凄いわね!消えない火は、鉄も燃やしてしまうのね!」王様も驚いています。「これは素晴らしい。ちょっと私に持たせてくれるか。」王様が薪をうけとると、マリも手を伸ばしました。
「王様はずるいわ!私にも見せて」「待て待て、待つのじゃ!まずはわしにじっくり見せるのじゃ!」「王様だからってずるいわよ!私にも見せて!」王様は、少女のマリと張り合って、本当に子供みたいですね。博士もセバスちゃんも呆れ顔です。
「まぁまぁ、王様、消えない火なのですから、焦る必要はありません。マリちゃんに見せてあげてはどうですか?」博士が大人の意見を伝えましたが、王様は聞きません。
マリが手を伸ばすと・・・、王様は慌てて薪を放り投げてしまいました。「あっ、大変!!」マリがあわてて叫びましたが、消えない火は窓から森へ出てしまいました。
「何ということです、火が燃えうつっててしまうかもしれません。すぐに消しに行かなくてはなりませぬ!」セバスちゃんは大急ぎで外に向かいました。王様とマリ、博士も慌てて追いかけます。表にでると、一本の木に火が燃え移っていました。
「大変じゃ、セバスちゃん、を持ってくるのじゃ!」自分が投げたのも忘れて、夢中で火消しに走る王様、セバスちゃんも急いで水を探しにいきます。しかし、博士は動きません。「どうしたの?博士」「王様、これは消えない火なのです。それは水でも消えない火なのです。私、消し方を考える事をすっかりわすれておりました。」
これには王様もびっくりです。「何じゃと、それは本当か?セバスちゃん、とにかく火に燃え移った火をけすのじゃ!」木に燃え移った火はどんどん大きくなっていきます。「王様、私にお任せ下さい」セバスちゃんがホースを引っ張って水をどんどんかけます。
けどやっぱり消えない火、いくら水をかけても消えません。「ダメよ、セバスちゃん、本当に水でも消えない火なのね。あーどうすればいいのかしら」マリもすっかり困り顔です。
王様にもいつもの元気がありません。「どうすればいいのじゃ、これでは町中に、いや国中に火が回ってしまうわい!!博士、本当に方法はないのか?」博士は困り顔です。
「すいません、王様・・・。」燃え広がっていく火を前に立ち尽くす王様達、このままでは、もう30分もしないうちに森は火の海になってしまうでしょう。その時、ズシーン、ズシーン・・・と、森の中から音が聞こえてきます。
燃えている木の周りの木が、どんどんと倒れていくではありませんか!?「おー、これなら火は広がらずにすみそうじゃ、一体誰じゃ!?木を倒しているのは??」ズシーン・・、倒れる木の中から、斧をもったキッコリーが現れました。
「王様、大丈夫ですか?ひとまずこれで火は広がらずにすみそうですね!」
「あー、キッコリー、お主のいうことを聞いておけばよかったのじゃ、わしが愚かじゃった。」「キッコリー、私もです。あなたのいうことを聞いておけばよかった。」王様も博士も、キッコリーに謝りました。
「いいのです、博士、王様。もし僕が木こりでなかったら、僕も消えない火を欲しがったでしょう!でも、この火はどうしましょう・・。」周りの木は倒れても、燃えさかる消えない火を消す方法が見つかったわけではありません。
その時です、マリが何かを思いついたように杖を振りました。「バンバン、ルン!」マリは燃えている火に杖を一振り、魔法をかけました。
「マリや、一体何をしたのじゃ?」「いいから見てて、私の考えが正しければ」皆が木をみていると、だんだんと火が小さくなっていくような気がします。「今よ、セバスちゃん、水をかけてみて!」「はいです!」セバスちゃんが再び水をかけると、なんと火が消えたのです。
「これは一体どういうことなのです?」博士がマリに聞くと、「今のは火の魔法よ!消えない火を、私の魔法の炎で燃やしたの」
「マリさん、ありがとうございます!もしキッコリーとあなたがいなかったら、私は国中を燃やし、取り返しのつかないことをしてしまう所でした。」博士はすっかり落ち込んでいます。
マリはいいました。「博士の発明は素晴らしかったわ。消えない火を、人間の力で消す方法を考えてね!」キッコリーも博士を励まします。「何回でも実験してください!もしまた失敗したら、いつでも木を倒しますよ!」
「わしも、消えない火の便利さに目が眩んでいたようじゃ。もっともっと勉強して、立派な国王にならなくてはいかんな。」セバスちゃんも王様の言葉にうなずきます。「じゃあ王様、帰りましょうか。お城の人形も退屈してるわ!」
                       ~王様とプロメテウス  END~

今回のお話しに出てくる、プロメテウスは映画にもなっておりますが、ギリシア神話において、人類に火を与えたとされる神様はです。はたして、火を手にした事は人々にとってはよかったのか、火は多くの幸福をもたらすと同時に多くの不幸ももたらしたかもしれません。
人々を闇の中でも照らしてくれる”火”、使い方によっては、恐ろしい兵器に変わります。今、世間で非常に関心を集めている原子力も、もし完璧に制御して使う事ができれば、人類にとっては、とても便利なものなのでしょうね。
ただ、果たして便利なものを追い求める事が本当に正しい事か・・・。わが国は世界で唯一の原爆による被爆国です。
原子力の問題は、ただ環境やエネルギーということだけでなく、便利な世の中を作る事、成長していくことを望む今の世界の姿が正しいのか・・、そんな問いかけをもっているのではないかと僕は思います。きっと正解がない問題なのでしょうが、消えない火は消せない火、これを忘れてはいけません。